ああ かたづけ!


 家にいる3人の青少年たちの辞書には、「かたづけ」ということばは、ないらしい。優しく、たくましい子に育ってと願ってきた。
 
 身のまわりの整理整頓なんてことを、きちんとさせようとすれば、どうしても、口うるさく言わなければならならない。
 いちいち注意しやりとげるのを見届けることができるほど、忍耐力もなかったのだが、やらなければならないことに気をとられているよりは、やりたいことを自由にのびのびとやらせたほうがいいと考えたのだ。きっと、そんなことは(こういう、とらえ方が間違いの元だったのか?)そのうちにできるようになるさ、と思っていた。

 優しさとたくましさは、どの子にも育ったことは嬉しいことだが、整理整頓はどの子も「いまいち」どころか「いまに」。
 
 二階の3人の各部屋で、一番きれいな所は押し入れの中!男女共同参画社会だというのに、将来お嫁さんに、しつけができなかったことをうらまれそう。 自分のことぐらい自分でできないでどうするんだろう?結婚してもいいようなイイトシした長男のことは特に心配になる。

 
 いまさら、ガミガミ言うほどの気力もなく、洗濯物はそれぞれのタンスにしまい、大きな袋持参で各部屋のゴミをかたづける。タンスとゴミ箱以外はできるだけ見ないようにしている。  が、つい眼がいってしまい、あきれてものが言えない状態になることもしばしば。

 この前なんて、ぬぎすてた靴下の上に、夜中に食べたのだろうラーメンどんぶりがあった!3人のどこの部屋にもありそうな風景だが、2人を少しだけ離して〜チャンピオン長男くんの部屋。

 まあ、そのうちに、きっと少しはましになるかなあと思ってきたのだが、「かたづけ」に関しては、成長が遅い・・・というか止まったままだ。母にも、我慢の限界ってものがある。ダムの水門が、一気に開かれたら 普段は静かに音もなく流れている下流の川がどういう状態になるか・・・青少年たち 想像せよ! 
 
 娘は、きちんとかたづけることができる。男女の違いが、我が家では、この点ではっきりあらわれているのは不思議だ。

 
 それでも、それぞれ年に何回かは掃除機の音をさせていることがある。そんな時はごちそうを作りたくなってしまうほど嬉しい。掃除機の音が数秒で止まることがあるから、早々とは喜べないが。タバコの灰をこぼした時だ。ヌカ喜びは、むなしい。
 
 気にしないようにしているだけで、乱雑な部屋が母の心をどんなにせつなくさせ、ストレスをためさせているか!男どもは少しもわかってないのだ。 
 
  ある朝目覚め、雨戸を開けながらなにげなく庭を見ると、車が一台ない!えっ?と思い、急いで次男の部屋に駆け上がっていってみるとふとんはもぬけのから。
 部屋はいつの間にかたづけたのかきれ〜いにかたづけられているではないか。枕もとには、読みかけの遠藤周作の「深い河」(家の中で話題になった本のうちの一冊・・読みかえしたのだろう)が置いてあった。
 
 2次試験の発表待ちの時・・この先、何年勉強すれば合格できるのか?もしかしたら何年たっても合格はできないのかもしれない。不安な思いが手にとるようによくわかる。
 
 試験の朝、ため息をつきながら「できが悪かったら、帰ってこないかもしれない」と、弱音をはいていたっけ。
 「範囲が広いんだもの、1年やそこらでうまくいくわけないじゃん。気長に気がすむまでやればいいよ。長い人生なんだものあせることないよ」とそのとき言ったのだが「どこかに行ってしまい、帰らないつもりかも?」と、一瞬思ってしまった。

 
 これはよかったことに全くの思い過ごしだった。カギがなかったので、入れなかったというだけのことだったのだ。家の中のいつもの所になかったので、外にあると思い 出かけたのだが、外のカギ置き場にもなかったんですと。
 私は、出かけたことも気づかずカギをかけ寝てしまったというわけだ。雨戸をたたけばいいのに、起こしたら悪いと思ったのだそうで、どこかで時間をつぶしていたらしい。
 
 きれいにかたづけられた部屋を見て心配になったのは、この時が初めてだった。
                   
               2002. 5.15
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