ひたいに脂汗 目からうろこ

 白いキャップと大きなマスクの間から 一重まぶたの目が、こちらを見るたびに身をちぢませていた。せめて エプロンははずしてくればよかったと後悔した。

 慢性鼻炎の3男が、「薬が切れたから もらってきて!」というので、いつものように 車で10分ほどの耳鼻科の病院に行った時のことだ。
 いつもは いっぱいの待合室が 花粉症の時期ではないためか がらがら状態だった。いつもは薬をもらうだけだが、ふと、「一年半も同じ薬を飲んだり 鼻に入れたりしていていいものだろうか?」お医者さんに状態を話してみようと申し込んだのだった。
 あわよくばもっと 効き目のある薬に換えるなりなんなりしてもらいたいという思いがあった。「いっつも 鼻がつまっている・・」と息子はいうのだ。

 カルテを見ながら、 私より10歳は若いと思われるお医者さんが言われた
「本人が来て 状態を見せることもしないで、そう言われても 何ともいえないですよ。もう 半年ぐらい 来てませんねえ。」
「あ〜申し訳ありません、部活やらなにやら忙しくて・・・」
「それは わかるけど。あのねえ・・・」で 始まったお医者さんの話に「そうですね」と「そうですか」と「はい」しか言うことができない私だった。

 以前 ここで なにに反応するかというアレルギーの検査をしたことがあった。5つぐらいに反応があった。杉、かもがや(?)、犬、ハウスダスト・・!
 お医者さんの小学生の子供さんは、喘息で杉やハウスダストは勿論、猫にも反応するのだそうだ。
 ふとんやシーツなどの寝具は、高価だがダニを寄せ付けないようなものにし有刺鉄線をはり、猫が敷地内にはいらないようにしたり、猫を飼っている家にはかわいそうだが、行ってはいけないと言っているということだ。
 

 私ときたら、検査の結果は「やっぱりね」と その時思っただけだった。アレルゲンから 遠ざけることより、丈夫な体を作ることの方が大事だと考えていた。私ができることは、より安全な食材で バランスの良い食事を作ることしかないではないかと。

 「ちゃんと 掃除してる?」お医者さんの目が、「してないでしょ?」と言っていた。
顔が赤らんでくるのが 自分でもわかった。
 子供が小さい時は、食べさせたら テーブルの下がひどいことになっていようと、外に連れ出し遊ばせることを考えた。それで 子供達は社交性があり友達とも仲良く遊べる子になったのはいいが、私のシミの元はこのころできた。

 
 子供が大きくなり、娘が県外の大学にいってしまうと、家には 掃除してもしなくても気づかない無反応の男たちだけになった。
 掃除は、お客さんがみえる前か、自分が汚さに耐え切れなくなった時だけしかしなかった。

 
 そうだったのか!ハウスダストをなくせば、息子の鼻は改善するかもしれないんだ。お客さんや自分のためだけでなく、掃除は愛する息子のためになるのか!
 大好きだった死んだおばあちゃんが、私を慰めるかのように、よく「ほこりでは死なないからね」と言っていたっけ。
 でも、おばあちゃん 死なないかもしれないけど、病気になるんだよ!
 「ひたいに脂汗、目からうろこ」だった。

 
 犬のクロとは仲良しで、 小さい時はクロの家に入ったり、屋根に登ったりして遊んでいた。今でも、学校に行く時帰ってきた時、声をかけ、なでたりしている。近づかないようにさせるのはつらいが 鼻のためだ。心を鬼にしなくては・・。

 家に急いで 帰ると、まず掃除、掃除。3男の部屋のカーペットをはずし、ソファーの下、いつふいたか記憶にないサッシまで拭いた。ドアをあけたら、二人のお兄ちゃんの部屋から ほこりが舞ってきては困る。そこも、掃除。勿論 一階に居ることも多いから 一階も掃除。

 子供達の部屋は、自分で掃除させるという教育方針で今までやってきたが、この際 そんなことを言ってられない。
 「なんで こんな 汚れたところで平気でいられるんだろう」と ため息つきつき 自分で気づいて掃除するまで「待つ」ことは、結構 ストレスがたまるものだ。
 もう、きょうから 待たない!しつけとしては、よくないかもしれないが、どんどん掃除する。ほこりと戦う。子供の健康のためなんだもの。


 掃除の前に電話で注文してあった布団屋さんに行き、枕やシーツも含めダニを寄せ付けない、中に入らせないという寝具を一式購入。薬で寄せ付けないというのと薬はつかってないのと2種類あった。薬は使ってないというもののほうが 高価だったが、そちらを買った。たとえば、シーツは、一枚9300円。息子の鼻が改善するなら、お金なんて なにも惜しくない。

 きょうから、私は毎日掃除をする。
突然のお客さんでも、あせることなく 中に入っていただける。
素足で 歩いても 足の裏になにかくっついてきたりしない。
何より、息子の鼻の状態が改善するかもしれないのだ。
忘れ物をよくしたり、???の成績も、鼻がつまり、頭がボーッとしてしまうことが原因だったとしたら、母が努力せずにいりゃりょうかって感じだ。


  この日から、10日ほどたっている。
 掃除は、勿論している。
 どうかすると、クロをなでたりしているので、私がそれを見て 声をあげるとニコッと笑って、急いで手をひっこめる。

                    
                   2002 7.10
                  
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