1×2×3×4=24 1245101120224455110284  
             
   「博士の愛した数式」から
(その1)

 小川洋子さんが2005年度の読売文学賞を受賞したベストセラー小説の「博士の愛した
数式」。読み出したら止まらない本である。

小説が出て、直ぐに映画化され一挙に有名となり多くの人に静かな感動をもたらせてくれた。
 〈数学〉という、ちょっと冷たく、固く、間違いのない四角四面の世界を、心温まる、人間の情感の世界を中心に据えて描いた、温かな美しいお話であり、女性作家ならではの、柔らかさ、優しさに満ち満ちている。

 映画では、博士を寺尾聰さん、家政婦を深津絵里さん、博士の義姉を浅丘ルリ子さん、大人になり数学教師になった家政婦の息子を吉岡秀隆さんがそれぞれ演じている。
 
 博士(寺尾聰)はイギリスで学び、数学で博士号をとった元大学教授である。20年ほど前、40歳代の後半に、義姉(浅丘ルリ子)と二人で奈良興福寺の薪能を見た帰り、交通事故に巻き込まれ脳に重大な損傷を受けてしまう。義姉も交通事故により受けた傷のため杖を使う生活となる。
 現在義姉は、工場を経営していた、夫である博士の兄が亡くなり、工場をたたみ、アパート経営をしながらひっそりと母屋で一人暮らす生活をおくっている。
一方、庭の隅にたてられた、小ぢんまりとした離れに一人で暮らす博士は、脳の損傷により、記憶力が80分しか持続しない。
そこには、日常生活を家政婦が世話をする毎日だけが待っていた。
どうしてか長続きしない家政婦。
そして、新しく家政婦派出所から紹介された【私】(深津絵里)が派遣されるところから物語は始まる。

“離れのことは決して母屋へ持ち込まぬこと”という約束を義姉からさせられ、始まった家政婦の仕事は、やがて家政婦の10歳の息子を〈ルート、(√)〉と、名づけて心を通い合わせるようになった博士と少年との出会いを交えて緩やかな、明るい時間が流れてゆくことになる。
博士は自分の記憶が80分しか持続しないことを良く知っており、その為に覚えなくてはいけない重要なことはメモをして体中にピンで貼りつけている。

 【私】が最初に家政婦として訪問した時の博士の質問は靴のサイズだった。
“君の靴のサイズはいくつかね”と、尋ねる博士。
24cmです”と答える【私】に、にこにこ笑いながら博士の会話が始まる。
24か、実に潔い数字だ。4の階乗だね”と数字で答えが明るく跳ね返ってくる。
 それ以降、毎日同じ質問が繰り返され、静謐な一日が始まる。
階乗とは1からその数字までの積だと丁寧に解説し、教えてくれる博士との、心の交流が始まった。

【参考:4の階乗とは、1×2×3×4=24のことです。】

 博士は数字を口にする時、必ず“潔い、美しい、素敵だ”と形容するのが常であった。
 ある時、【私】に誕生日を訪ね、
220日」だと【私】が答えると、
“素晴らしい、
220か、友愛数だ”・・・・と答え、
自分の腕時計にある、優秀な学生のみに与えられた記念時計の受賞ナンバーと思しき数字を嬉々として、見せてくれた。

そこには、284という数字が刻まれていた。

220の約数と284の約数のそれぞれの和は丁度逆の284220になり、これが友愛数であり、まだ、世界で5つしか発見されていないこと、お互いの数字の220284が、たった5つしか存在しない友愛数であることの不思議な縁であること」、を心から喜び、博士の顔に笑顔がこぼれた。

 

【参考;220284が友愛数とは次のとおりです。 220の約数の和;1245101120224455110284、 284の約数の和;12471142220

 

【私】も博士の姿を見て次第に数字に興味を持ち、仕事が終った夜遅くなど一人数字と格闘したりする。
ある時【私】の歳が約数の合計28と同一であることを発見し、博士に喜び勇んで報告をすると博士は感激したような面持ちで次のように話してくれた。
“美しい、28は完全数だ。”
笑顔で答え、そして、28より小さい完全数は6であり大きい数は486であること。
完全数とはその数自身を除く約数の和がその数自身と等しい自然数であること、まだ発見されている完全数はごく少ないこと、など話してくれる。
そして28は阪神タイガースのエース、江夏豊の背番号であり、事故のため20年前で止まったままの記憶による阪神タイガース、そして江夏の活躍ぶりをも楽しく話すのだった。

【参考:628の完全数は次の通りです。

 6123、 28123+4+714

(その1終わり。その2につづく)

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